過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「どうかした?」

思わず表情を曇らせてしまった。私を伺うように見てくる久々莉に、慌てて手を小さく振った。

「い、いえ。なんでもないです」
「そう?」

私に向けられたわずかに疑う視線に、もう一度首を振って否定する。冷やかされるのが恥ずかしいのだと訴えれば、なんとか納得してくれたようだ。

「まあ、旦那様と何かあるようなら、今度こそ私が許さないわ。前は守ってあげられなかった分ね。いつでも頼っていいのよ」
「はい、ありがとうございます」

拓斗と何かあるとは思わないが、久々莉の心強い言葉はありがたくて素直に感謝を伝えた。

「それで、何か頼みがあるんだったわよね?」
「そうなんです」

持参した、以前久々莉がデザインしたドレスの写真を差し出した。

「私のデザインね」
「はい。この部分に使ったレースを私も使いたいんですけど、入手できなくて。久々莉さんなら伝手があるかと思いまして」

写真を手にした久々莉は、入手先を思い出そうとしているのかじっと見入っていた。

「野々原さんは今、神山さんの元で働いているんだったわね?」
「ええ、そうです。アローズの方ではなくて、別の事業なんですけど」

フェリーチェでは、アローズグループの神山拓斗が私を引き抜いたという認識になっているはずだ。しかし、私の実力ではアローズのブライダル事業に向かないなど、上司であった久々莉なら理解しているはずだ。

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