過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
ドレスの材料が届き出し、パーテーションで仕切っただけの私の作業スペースは、あっという間にもので溢れていった。久々莉を介して入手の手はずを整えたレース生地も、もうじき届くと連絡があり、楽しみにしている。

『……はい。……また後ほど』

今日はオフィスの方へ拓斗が来ており、先ほどスマホを片手に奥へ行く姿を見かけた。その声がところどころ漏れ聞こえてくる。外へ行かないところを見ると、ここの仕事絡みの相手なのだろう。

彼がオフィスへ顔を出すのは、それほど多くない。アローズの副社長である拓斗は、常に時間に追われているからだ。
二足のわらじというには、ここの規模は小さすぎるかもしれない。けれど彼は、この事業をとにかく大切にしており、時間の許す限り顔を出して精力的に動いている。

「すまないが、今日はこれで席を外すから後はよろしく」

お昼間近になり、拓斗の声が聞こえてきた。
カツカツと響く彼の足音は、確実に自分の方へ向かっている。

「美香、お疲れ」

パーテーションからひょいと顔を出した拓斗に、私も労をねぎらうように笑みを返す。

「お疲れ様です」
「今日はもう戻らないから、あとは頼んだ。美香も、根詰めすぎないように」

集中し出すとつい時間の感覚がなくなりがちな私を諫めるように言う拓斗に、内心お互い様だと言いたくなる。彼もワーカーホリック気味なところがあるからだ。
私と暮らすようになったのをきっかけに、帰りが遅くならないように仕事を調整するようになったと話していたが、それでも休日も出ている日が多くて心配になる。

「拓斗も、きちんと休んでくださいね」
「ああ、ありがとう。それじゃあ」

< 124 / 187 >

この作品をシェア

pagetop