過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
ふと以前久々莉が話していた、朔也が他の女性といる場面を見かけたという話を思い出してしまった。

『――遠目だったから断定はできないけれど……とても仕事がらみで出かける場所とは思えなくてね』

このお店はどうだろうか?
大通りから一軒分奥に入ったここは、落ち着いた雰囲気で話をするには適しているだろう。でも、駅からはわかりづらい場所だし、少し距離もある。そして、人目に付きにくい。
もし拓斗に用があってこちらまで来たというのなら、会うのは駅前だとか仕事の話ならオフィスだってかまわないのではないのではないか。

次第に、あまり適しているとは思えない場所で彼らが会っているのはなぜかと、疑う気持ちが生まれてきてしまう。
ふたりが一緒にいるところを見られたくないから? それは、誰に?

チャリンと鳴らされた自転車のベルの音にハッとして端に寄った。
いけない。こんな歩道の真ん中で立ち止まっていては邪魔になってしまう。
もう一度チラリとふたりの方を見て、なんとなくもやもやとした気持ちを抱えたまま、その場を後にした。

外食する気分ではなくなってしまった。食欲が失せてしまい、コンビニでサラダだけ購入すると、駆け足でオフィスへ戻る。その自分の姿が、なんだかまるでふたりから逃げてきたようでズキリと胸が痛んだ。


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