過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
遠慮する必要なんてなかったのかもしれない。さすがにあの場で合流するのははばかられるが、メールで存在を知らせて外から手を振るぐらいしてもよかったのではないか。
でも、ふたりの関係性を知らされていない私には、どうしてもそれはできなかったに違いない。してはいけないとすら思ってしまう。
もしあの場で私が顔を見せていたら、ふたりはどんな反応をしただろうか?

それからは何をしていてもふたりが会っていた場面を思い出してしまい、作業はまったく捗らなかった。
帰ったら拓斗に聞けばいいのに、何を聞かされるのかと想像すると怖くなってしまう自分がいる。
なぜ拓斗と久々莉が会っていたのかという疑問が、いつの間にか私に黙って会っていたのかという疑いに変わっていく。一度そう思い込んでしまえば、心に広がる猜疑心は深まるばかりだ。

たとえ拓斗が「仕事だよ」と答えたとしても、そのまま受け取ることができるだろうか?
一度裏切られた経験をした私には、どうしたって疑う気持ちを抱いてしまう。
こんな気持ちのまま作業が進むわけもなく、定時と同時にオフィスを後にした。


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