過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「ただいま」

突然聞こえた拓斗の声に、思わずピクリと体が跳ねた。玄関を開ける音に、まったく気が付かなかった。
さっと時計に視線を走らせれば、二十時半を示している。自分が帰宅してから、二時間ちかく経っていたようだ。早め帰宅していたはずなのに、ぼうっといているうちに思った以上に時間が経っていたようだ。

「お、おかえりなさい」

普段なら玄関で出迎えているのに、慌てて立ち上がった頃にはリビングの入り口に拓斗の姿があった。

「あれ? どうかしたのか」

それほど私の様子はいつもと違ったのだろうか? 首を傾げる拓斗にどうもしていないと返すも、その心中はすっかり動揺している。

いつもと変わらないように努めながら夕飯を済ませた後、ソファーに並んで座ったものの、ふたりの間は心なしか距離が開いてしまっている気がする。
彼が今どんな表情をしているのかを見る勇気がない。このほんの少し開いた距離に、拓斗は気づいているのだろうか。

「今日はあの後、変わりなかった?」

『根詰めすぎないように』と拓斗が声をかけてくれたのは今日の昼間だというのに、もうずいぶん前のように思えてしまう。

「え、ええ。とくには……」

わざとらしい反応になってしまったかもしれない。それを悟られないように、こちらから問いかける。

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