過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
マルクと名乗った彼は、時折手が空くと私の話し相手になってくれた。彼は以前日本に住んでいた時期があり、共通の話題に思いの外会話が弾む。ついついお酒が進んでしまった。

アルコールに特別弱いわけではないものの、食事もそこそこに飲んでしまったのはよくなかった。思考がぼんやりしてきたのを感じてそろそろセーブしようと思った頃、すっと隣に誰かが座る気配を感じてピクリと肩を揺らした。
席はまだ空いているというのに、わざわざ隣に座るのはどうしてだろうと、こっそり隣を見る。

どうやらアジア系の男性らしい。同郷かもしれないと思って隣に来たのだろうか? 思わず男性を観察するように見てしまう。
座った状態でもわかるほどの長身だ。加えて、かなり端正な顔立ちをしている。歳は私より少し上だろうか。

明るさを抑えたこのお店の雰囲気も影響しているのか、彼の切れ長の目はどこか色気が漂っているように見えて、直視してはいけない気さえしてくる。
少し薄めの唇はわずかに口角が上がり、凛々しい顔立ちにほんの少し甘さを加えていた。

あまりに凝視しすぎたせいで、チラリとこちらを流し見た彼の視線とぶつかった。
しまったと慌てて正面を向いたけれど、意識は完全に隣の男性に向いたままだ。

じろじろ見るなんて、失礼な女だと思われてしまっただろうか。その整った容姿に驚いて思わず見惚れてしまったのと、同じアジア系の人だと勝手に親近感を抱いてしまっただけで他意はない。

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