過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「美香。俺が美香と結婚したのは、決して利用しようと思ったからじゃない。いや、力を貸して欲しいなんて回りくどい理由を付けたのが悪かったんだな。本当にそう求めていたんだが……」
「拓斗?」

なんだか思い詰めた様子の彼に、思わず声をかけていた。

「あの夜、初めて言葉を交わした美香は、何を話しても〝うそ〟と切り返していた。その後も、言葉にこそしなかったものの、美香は他人に一線を引いて疑ってかかっていると感じた。桐嶋に裏切られた後だ。人を信じられなくても仕方がない」

拓斗に言われて、当時を思い起こしていた。

「おまけに、会社にあらぬ疑いをかけられて何の弁明もさせてもらえなかった美香は、ますます警戒していた」

たしかにその通りだ。自分の周りの誰が味方で誰が敵なのかと。気が張っていた。

「いくら俺が美香に〝好きだ〟と伝えても、信じられなかっただろ?」

拓斗が最初に結婚を提案した時、確かにそんなふうに言っていたのを覚えている。それに、肌を重ねていた時も『好きだ』と言ってくれた。それを私は、感情が高ぶったその場だけのリップサービスだと捉えていた。

「そう、ですね。たしかに、拓斗の〝好き〟という言葉をその場の雰囲気で言ったぐらいにしか思っていませんでした」
「ひどいなあ。やっぱり信じてなかったか」

苦笑する拓斗に、まさか本心だったのかと目を見開いた。

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