過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「こんなパッとしない、彼氏に振られたばかりの惨めな女なんて相手にしなくても、拓斗ならもっと魅力的な女性をいくらでも誘えますよ」
「他の女性はいらないな」
「え?」

他の女性は、いらない?
思わず拓斗の方を見れば、彼の熱い視線から目をそらせなくなってしまう。
ドクリと高鳴った心臓は、だんだん痛いぐらい打ちつけ出した。

「俺は、美香がいいんだ」

不意に近づいた彼に耳元でそう囁かれて、思わず体が震えた。
恋人だった朔也にすら、こんなにまっすぐに求められた記憶はない。

本名なんて教えるんじゃなかった。呼ばれただけで必要以上に反応してしまいそうだ。

「美香、君は魅力的だ。誰が何と言おうとも」

頭の中がふわふわするのは、酔いのせいだけではないだろう。彼の甘すぎる雰囲気に呑み込まれてしまいそうだ。この情熱的な視線は心臓に悪い。
こんな素敵な人に口説かれたら、何も思わずにはいられない。たとえ彼にとって自分が簡単に落ちる都合のよさそうな女だと見られていると、頭のどこかでわかっていても。

「俺は、美香が欲しい」
 
そっと重ねられる拓斗の手の熱に、小さく体が跳ねた。

これまで、刹那的な関係を持つなんて一度だってなかった。遠距離恋愛をしていても、その相手との連絡が途絶えがちになって不安になったときも、ほかの男性に目を向けるなど断じてしてない。

けれど、長く付き合った恋人に何の前触れもなく振られた挙句、直接話をさせてもらう機会も与えられないまま連絡を絶たれてしまった今、自分は思っていた以上に弱っていたようだ。重ねられた彼の手の熱が心地よいと思ってしまうぐらいに。

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