過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「えっと……じょ、冗談、ですよね?」
「冗談でこんなことは言わない。俺は本気だよ」

まっすぐに見つめてくる彼の目が、私の聞き間違いなどではないと伝えてくる。
けれど、急に結婚なんて言われても混乱するばかりだ。

「目的を、伺っても? ま、まさか、私を好きとかなんとか、言わないですよね?」

どことなく気まずい空気を壊したくて、あの夜そうしていたようなまじめに取り合ってない言い方をする。

「そのまさかだ。俺は美香が好きだから」

そこまで言って、彼は真剣な表情を少しだけ崩した。

「と言っても、美香は〝うそだ〟と言うんだろうな」

拓斗は苦笑しているが、まさしくその通りだ。こんな突拍子もない話を真に受けるわけがないのだから。
緊張感を解いた彼に、正直ほっとした。

私を揶揄っているとしたら、悪趣味すぎる。
結婚して欲しいだなんて今の私には笑うに笑えない。冗談だとしてもきつい。

それに、この経験豊富そうな人が、まさかたった一度肌を重ねたぐらいで責任を取るとか、そんなふうに言い出すとは思えない。
だとしたら、どうして唐突に結婚などと言い出したのか。

「本気じゃなかったら、こんな提案などしない。でも、そうだなあ。面識のなかった男に突然プロポーズなんてされても、理解できるわけがないな」

〝プロポーズ〟という言葉に、思わずピクリと反応してしまった。この人はほぼ初対面の相手に、一体何を言っているのか。
訝しく思う私の心情は相手にも伝わっているのだろう。拓斗は何かを思いついたのか、笑みを深めた。

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