過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「それからふたつ目の理由は、デザイナーとしての美香が必要だから」
「デザイナーとして?」

駆け出しの無名デザイナーの私に、どんな価値があるというのだろうか?
思わず首を傾げる私を、拓斗はまっすぐに見つめてくる。それがあまりにも真摯で、そんなふうに見られたらなんとなく居心地が悪くてもぞもぞとしてしまう。

「俺は、デザイナーとしての美香を買っている」

本物をたくさん見てきただろうこの人に褒められるほどの実力など、私にはない。私以上のデザイナーなんていくらでもいる。
それに、先日出会ったばかりの拓斗が、どうして私のデザインを知っているのか。
思わず怪しく疑う視線を向けるも、拓斗はそれを堂々と正面から受け止めた。

「美香に関することは、たいてい知っている」
「え?」

――ストーカー――

思わずそんな言葉が頭に浮かんだ。
当然だ。そう思うには十分なほど、彼は話してもいない私の個人情報を手にしている。

「言葉通りだ」

やはり詳しく教えてはくれないようだ。
けれど、彼の誠実そうな外見のせいなのか、それとも高価なものを自然に着こなしてしまう風格のなせるものなのか、不思議と嫌悪感は湧いてこない。
自分のプライベートを知られているのは気がかりなのに、なぜかこの人はそれを悪用などしないと思えてしまう。

「美香のデザイナーとしての才能が欲しい」

私の力量に対する彼の評価はよくわからないけれど、とにかく突然拓斗が私と結婚して欲しいと言い出した一番の理由はここにあるのかもしれないと思った。

< 58 / 187 >

この作品をシェア

pagetop