悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
「じゃあ、またあとで」

踵を返したクラークに向かって、片手を上げて笑いかけたら、彼がピタリと足を止めて、またじっと見つめてきた。

「その手は?」

「え? あっ、その、すみません」

慌ててアメリアは手を下ろした。この世界にもある挨拶だけれど、貴族しはないものだ。令嬢であれば尚更である。

「えっと、その、友達に『またね』という時にやってしまうというか」

じーっと見つめてくるから、アメリアは〝友達〟に嘘をつけなくてそう教えた。

すると、彼が「ふうん」と言って口角を引き上げた。

「『友達』ですか。悪くないですね。堅苦しい挨拶より、そっちの方がお前に合っている気がします」

そう告げたかと思ったら、クラークが同じように片手で応えて人混みの中へと入っていった。アメリアは嬉しくなって、つい笑ってしまった。

「むふふっ、やっぱり同志の友達って、いいなぁ」

よくは覚えていないけれど、前世でも、こうやってアメリアに気兼ねなく接してくれていた異性がいた。確か大学が一緒で――。

そう思い返しながら歩ぎ出したアメリアは、笑顔を引っ込めた。

そこには、こちらへと向かってくるエリオットの姿があった。なんだか不機嫌そうに人混みをかきわけ、あっという間にアメリアの前に立った。

「誰かと話していたのか?」

「え?」

どこかきつい調子で問われて、アメリアは戸惑った。

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