悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
「まぁ、その、少し、知り合いと……」

そうアメリアが答えている間にも、エリォットはその視線を人混みへと向ける。彼の目がとある場所でぴたりと止まって、細められた。

「――近衛騎士隊長の、灰色の髪…………」

ぼそり、と低い声で呟く。

アメリアは、会場内が賑やかさを増してよく聞こえなかった。一体なんだろうと思っていると、演奏音が流れ出して「あ」と気づいた。

その時、手を取られた。

「そろそろダンスが始まる」

そう言ってエリオットに手を引かれ、アメリアは「え?」「あの?」と彼に目を戻した。その間にも、人混みの中へと誘われていた。

「婚約者と一番に踊るのが礼儀だ」

「はぁ。そうですね」

踊る場所へ向かうべく、エリオットが前へ視線を向けた。むすっとしている感じの表情で手を引く姿は、ゲーム画面の〝彼〟と重なった。

――女避けだなんて、思いつかなければ良かったのに。

アメリアは、しっかりしていてもまだ十八歳な、エリオットの不機嫌な横顔を見つめながら思った。

たとえ縁談話があったとしても、第二王子である彼ならば一言、断るだけで済むだろう。その手間さえ我慢すれば、こうして、嫌な気持ちで婚約者(わたし)を引っ張らずに済んだのに。

「殿下、もし私と踊るのが嫌なら、無理をする必要は――」

気づいたら、アメリアはその背に声をかけていた。

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