悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
表情はキリリとした無表情だが、彼も気になっているようだ。眼鏡の向こうにある彼の目の奥に、その感情が滲んでいるように見えた。

「そういえば、クラーク様はどうしてミッチェル様をお慕いに?」

もうそろそろで落ち着きそうな自分の呼吸を整えつつ、アメリアは尋ねた。給仕が向かってくるのに気付づいて、申し訳なさそうに手で不要を伝える。

しばし、クラークは考えるような間を置いていた。

「昔、父に連れられて登城した際に、広い王宮の庭園で迷ってしまいまして」

ややあってから、クラークが思い返すような声でそう言った。

「その時、どこか物憂げに佇んでおられるお姿を見たのです。どうしてか私は、咄嗟に隠れてしまいました。彼女は、ふっと上を見て、小さく口ずさみながら手を差し伸ばしまし。その指先に、小鳥が」

語る彼の眼差しが、当時を振り返ってやや細められる。

話を聞きながら、アメリアはその光景を想像して悶えた。「羨ましい!」と顔を手で覆うと、妄想だけで感激に震える。

「なんって素敵なの……!」

「まさにお前の言う通りです。さすがは同志です。どうやら、その小鳥は足に少し怪我をしていたようで、彼女が介抱して空に放っていました。私は、その一連を見届けるまで動くことができなくて――女神だ、と思いました」

分かる。話を聞いているだけで、その女神な風景に共感できた。

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