悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
ぷるぷる震えつつ、アメリアは推しの姿を目に焼き付ける。近衛騎士隊長であるクラークもまた、腿の上に置いた拳をぶるぶるさせて真顔で耐えていた。



◆§◆§◆



ミッシェルの恥じらった顔が、なんと麗しかったことか。

家に戻ったアメリアは、思い返してソファの上で「ほぅ」と熱い吐息をもらした。その姿はまるで恋煩いでもして、その相手を想っているかのようだった。

屋敷の一階サロンに居合わせたメイドや男性給仕達が、働きながらチラチラ目を向けていく。

きちんとしていれば、アメリアもそこらの令嬢にも負けない美しさだ。ただ屋敷の者達も〝黙ってじっとしていれば〟と普段の彼女を知っていた。

「私、ミッシェル様の侍女になりたい……」

そう呟かれる声を、屋敷の者達は慣れたように聞き流していた。彼女がよく分からない独り言をぶつぶつしているのは、最近はとくによくあることだった。

「はぁ。専属の侍女になって、手取り足取りお世話したいわ」

「いきなり何言ってんの?」

兄のロバートが、空気も読まず妹に言った。

湯浴みを済ませてきた彼が、そのままどかりと隣に腰を下ろす。自分と同じ甘い香りが、ふわりと漂ってくるのを感じてアメリアは目を向けた。

こういうところも令息らしくない。妹馬鹿をどうにか直させるために、庶民混同の軍の訓練校の寮に放り入れたせいか、と両親は気にしていた。

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