あやかし戦記 葛藤の炎
ギルベルト、そしてギルベルトの部下たちは、この屋敷の地下室で妖に関する研究を日々行なっているらしい。しかし、地下室に向かう道がわからず、イヅナは広々とした屋敷の中で迷子になりつつあった。その時。

「イヅナさんじゃないか!久しぶりだね〜」

声をかけられ、聞いたことのある声に振り向くと、イヅナの同期であるアレンが手を振って人懐っこい笑みを浮かべて走ってくる。その隣にはチターゼもいた。二人に会うのは久しぶりである。

「アレン、チターゼさん、久しぶり。元気だった?」

イヅナが訊ねると、アレンは任務で楽しかったことや大変だったことなどを話し、チターゼは興味なさそうに窓の外を見ている。しばらく話した後、アレンはイヅナを見て言いにくそうに口を開いた。

「そういえば、聞いたよ。人狼をイヅナさんが倒したって話……。最初、捕獲しようとしてたんでしょ?その人狼のこと」

ニコラスの姿が頭に浮かび、イヅナは泣きそうになりながら頷く。すると、「くだらない」と棘のある冷たい言葉をチターゼが放った。

「その男、記憶がなかったとはいえ、人を何人も殺した。始末されて当然だろう。人狼ーーー妖だったんだから」
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