あやかし戦記 葛藤の炎
チターゼの言葉、そして冷たい目がイヅナの心の傷を抉っていく。その場にいられず、イヅナは二人に背を向けて走った。後ろでアレンがチターゼに何か言っていたが、もう何も聞きたくはない。

とにかく二人から離れようと走っていると、曲がり角で誰かとぶつかってしまう。尻もちをついてしまいそうになるが、イヅナをぶつかった相手が支えてくれたため、無事だった。

「イヅナ、一体どうしたの?そんなに泣きそうな顔して……」

ぶつかった相手は、幸運にも探していたギルベルトだった。心配そうに見つめられ、細い指が優しくイヅナの頬を撫でた時、堪えきれなくなったイヅナはその場で泣いた。

「……助けてあげたかったのに、できなかったんです。……倒すしか、できなかった……。悔しい、悲しいんです!私、私ーーー」

ギルベルトは泣き続けるイヅナを優しく抱き締め、静かに話を聞いていた。そして、イヅナが少しずつ落ち着いてきた頃、その無防備なおでこにキスを落とし、イヅナの涙を完全に引っ込ませてしまう。

「イヅナ、俺に任せてくれないかな?君の願いを叶える道具を作ってみるよ」

ギルベルトにふわりと微笑まれ、イヅナの胸が優しく高鳴った。
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