小さな願いのセレナーデ
母の態度は娘というよりも、気が向いた時に可愛がる愛玩人形のような態度だった。気に入らないなら変えましょうと母は次々シッターの人を変えていったが、派遣元は同じところだったので情報は共有されているらしく、根本的な解決はしなかった。きっと悪口を言い回っている人が居たんだろう。


そんな中、しびれを切らしたのはお兄ちゃんだった。

当時はまだ高校生だったはず。だけど徹底的に証拠を集めて派遣元との契約を打ち切りまで持っていき、更に他の人が見つかるまで自主的に私の世話係を引き受けていた。
ユキさん……本名がホユキンプロ ダゥーラ(Höykinpuro Dearbhla)というれきっとしたアイルランド出身の人を見つけてくるまで、二年間もお兄ちゃんが私の面倒を見続けていた。ちなみホユキンプロと言えなかったので、ユキさんと呼び始めたのは私だ。
そのユキさんも当然ちょっとワケアリで……かい摘まむと産まれはアイルランドでアイルランド人の父とアジア人の母とのハーフで、日本人と結婚して日本で暮らしていたはいいが熟年離婚されて、途方に暮れていたところをお兄ちゃんが見つけてきたらしい。
どんな嗅覚してたらそんな人見つけてくるの…!と思ったが、多分お兄ちゃんはこういう人を狙って探していたんだと思う。
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