小さな願いのセレナーデ
ユキさんも今の髪色は暗い色に白髪が混じってグレーみたいな感じだけど、昔はもっと明るい色をしていたらしい。だからアジア系の顔とちぐはぐだったし、周りと容姿が違うことで随分と苦労していたのだと言っていた。だから私の境遇を理解して一緒に嘆いてくれた。お兄ちゃん以外唯一の味方になってくれる人だった。
だけどユキさんが来てくれることになっても、私達…特にお兄ちゃんは、なるべく人手を借りない方針を変えることはなかった。
なぜならユキさんは当時、定年退職間近の五十代半ば。
多分ユキさんの引退後は、代わりの人が見つからないと想定していたんだろう。ユキさんが辞めた後は、お兄ちゃんは自分達だけで何とかやりくりしていくつもりだったみたいで、私もそのつもりでいた。
だから小学生半ばで定年退職した後、ユキさん自ら日数を減らして通ってくれる提案をしてくれた時は、すごく嬉しかった。
だけどいつかユキさんが居なくなる日を想定して、なるべく自分達でするという方針はずっと変わらず、ここまで来ている。
家事をするのは名家の令嬢らしくないとも驚かれたし、一部の人からは見下されもした。だけどいくら言われても、信用できない人を家に入れる方が嫌だった。