小さな願いのセレナーデ

だけど親は「そんな遅くに始めたバイオリンでプロになんかなれない」と、二人ともその主張を崩さなかった。
特に父親は、私を海外に出す予定でいたようだ。
そこそこ名のある海外の学校に入れて、あわよくば海外にコネ作ってくれたらラッキーだと思っているようだった。


正直、悔しかった。
毎日手首が動かなくなるぐらい…指先の感覚が無くなるぐらい弾いていたことを、親は知らない。
何も知らないクセに、よくもそんな事が言えたもんだと。

一年ほど冷戦状態だったが、ある日海外から帰ってきたお兄ちゃんは、私にこう聞いた。
「桐友学園を受ける気はないか?」と。

「コンサートを一緒に見た人が、桐友出身の人だったんだ」と言って、色々桐友学園のメリットを挙げてくれた。

世界で活躍する音楽家を排出した名門校であること。
学費は確かに他の音楽科に比べて高いが、レッスン体制や個別指導もかなり充実してるということ。高校卒業後は、そのまま海外留学に行く人も多いこと。海外の名門音楽大学へのパイプも太く、留学へのバックアップ体制も整っている。もし失敗して帰国することになったとしても、桐友学園大学の方へ戻るハードルは低いことも。
この海外とのパイプは、親に対するアプローチにもなりそうだということも説明された。

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