小さな願いのセレナーデ
それに私は、家を出たところで『久我家に産まれた』という事実は変わらない。
まだ今は平穏だけど、会社の動向次第によっては狙われる可能性は充分あることは自覚していた。
誘拐などに合ったことはないけれど……電車が止まって足止めされた時でも警備の人は飛んで来るし、塾が遅くなっただけで警備の人が迎えに来る。
結局私は、そんな窮屈な中で生きていかなきゃいけないのだ。

そんな窮屈さに疲弊することは多かったが、お兄ちゃんは私にこう言っていた。
「この家の権力を利用しろ」と。
それが一番の、教えだった。

「せっかく恵まれた産まれなんだ。利用できるものは、とことん利用させて貰えばいい。金も、コネも、全部」

その言葉は、悲しいほどに当たっていた。

だから私はこの家の財力とコネを利用して、一流の人に学びながら、一流の桐友学園の付属高校に合格することができた。
全て金に物を言わせた結果だった。


私は『久我家』を存分に利用した結果、全て望んだものを手にすることができた。



ただ……お兄ちゃんはどうなんだろうか、と。
その事はいつも疑問に思っていた。
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