ウソツキハート
「天気、いいですね。」
ぼうっとしていたために、頭上に影が差して初めて、近くに人が立っていることに気がついた。
顔をあげて、『あ…』と、思ったときには遅くて。
「前に、ベンチを譲ってくださいましたよね?」
目の前に立っていたのは、彼の奥さんだった。
腕には、可愛らしい女の赤ちゃんが、にこにこと笑って抱かれている。
「隣、いいですか?」
立ち上がろうとしたときには、そう声をかけられていて、今更、急に立ち上がるのも不自然だろう。
「どうぞ。」
なんとか笑顔を作って、彼女にベンチを勧めた。
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