政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

「楓君…ごめんね。小野寺さんのスーツに…」
「そんなことはいいんだよ。別に。小野寺さんだって気にしてない」
「…うん」
「体調悪いのなら何で俺に早く言わないんだよ」

彼の語調が強まるのと同じタイミングでエレベーターのドアが開く。
ちょうど開いたその先には数人のお客さんがいて、私と楓君は口を噤む。
靴擦れのせいで歩くのが遅い私に合わせてゆっくりと歩く楓君はチラッと私の足元を見た。

「靴擦れ?」
「うん…慣れてなくて、こういう靴」
「だったら尚更、早く部屋に戻っていたらよかったんだよ。それとも小野寺さんには言えて俺には言えない?」
「違うよ!今日は…頑張りたかっただけで、」
「頑張るって…日和は頑張る必要ないんだって。無理やり結婚してそれで無理やり夫の仕事に関わらなくちゃいけないなんて嫌だろ。これから長く一緒にいるんだから、今無理して結婚生活が嫌になられても困る」

苛立った様子で彼は部屋のドアを開けて中に進む。
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