政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「楓君?」
「ほんと、ムカつく」
「…」
「日和の異変に最初に気が付きたかった」
「異変って。ただ靴擦れしてただけだし、あとアルコールの影響でちょっとフラフラしていただけだよ?そんなに大したことじゃない」
「そういうのに気づきたいんだよ。俺が一番日和のことを理解していたいし、知っていたいし」
―独占したい
息をするのも忘れるほどに彼の顔はとても綺麗だった。どこかの国の王子様のように。
小さな頃に読んだ絵本に出てくる王子様のように。
彼の顔が近づく。キスをするのだと理解した。
拒むという選択肢はなかった。だって、私だって彼とキスをしたいと心の底から思ったから。
彼と唇が重なろうとしたとき、携帯の着信音が部屋に響いた。
我に返ったように私は目を開き、彼に声を掛ける。
「電話…大丈夫?」
「…」
楓君は、しかめっ面でスーツの内ポケットから携帯電話を取り出した。まだ鳴り響くそれを確認すると更に顔を歪ませる。