政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
ついこの間の旅行では手が触れそうなほどに距離が縮まったと思っていた。
“思っていた”のは私だけだったのかもしれない。

ひんやりと冷たい彼の部屋に入るとベッドの上に座るように指示された。

前回のような心の準備の時間をくれないのは彼の目を見ればわかる。
ベッドの中心に正座をする。楓君がそれに続くように正面に膝立ちをすると私に手を伸ばした。
指で私の髪を掬う。上目遣いで彼を見つめる。

「俺が触れるといつもそんな顔だよな」
「…そんな、顔?」

さらさらと髪が彼の指から落ちていく。
髪に神経などないのに、彼の熱を感じる。反して冷たい濁った彼の双眸が向けられる。
数秒見つめ合うと、彼の手が私のパジャマに移る。一つ一つ、丁寧にボタンを外していく様子を体を強張らせながら見ていた。冷たい外気が露出した部分の体温を下げていく。

「震えてるけど…やっぱり嫌なんだ?」
「違う…っ寒いだけ、」
「ふぅん。大丈夫すぐ温かくなる」

口元を歪めてそう言うとぐっと私の肩を押して押し倒す。
揺れるベッドの上で視線を逸らす間もなく唇を塞がれた。

「…っふ…んん、」

 そのまま素肌の上を撫でる手は弱い部分を的確に攻めていく。
呼吸が苦しい。息継ぎが上手く出来なくて、助けを求めるように体を捩る。
 しかし彼はキスをやめなかった。舌がねじ込まれて唾液が絡む卑猥な音が鼓膜に響く。
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