政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

「大丈夫?一応ゼリーとか買ってきたけど、家に帰ったら食べられそうなもの作るから」
「ありがとう」

 一番近くの病院が松堂君の勤めている病院ということを楓君は知っていた。(病院名は松堂ではないから調べなければわからないはずだ)
つまり、彼のことを事前に調べていたことになるけど、その理由は何だろう。

 車内で揺られながら10分もしないうちに車が駐車場に止まる。

 止まったと同時に、スマートフォンの音が車内に響く。彼がジャケットから会社用のスマートフォンを取り出した。
一瞬見えた“清川”という名前に胸が締め付けられる。もうじき彼女は秘書から外れる。

それなのにモヤモヤしてしまう。

「どうかしたのか。うん、いや、今日はもう出社しない。その件は明日」
淡々とそう言って電話を終えると「行こう」と言った。


ゴホゴホと咳をしながら車内を出ると冷たい外気に首を竦める。
こんなにも体は熱いのに寒くて仕方がない。熱がこれ以上上がらなければいいのに、と思いながら病院の入り口を通り抜ける。
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