政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
注射は苦手だった。

針が刺さるところなど直視できるわけがないのに、意外にも周りは平気だという人がいて驚く。

看護師さんに点滴をしてもらうのを顔を背けながらじっと耐える。
痛みは確かに一瞬だが、やはり苦手だ。

「寝ていても大丈夫ですから。休んでいてくださいね」
「ありがとうございます」

看護師さんの笑顔に救われ、瞼を下ろした。
どのくらい時間が経過したのか、目を覚ますと女性の声が聞こえた。横に顔を向けると先ほどの看護師さんがいた。

「あ、」
「体調どうですか?点滴取りますね」

手際よく点滴を取る看護師さんの動きを見ながら、少しは体が良くなるといいなと願った。
早く良くならなければ家事が溜まる一方だし、楓君に迷惑が掛かってしまう。

「旦那さん、素敵ですね」
「え?」
「もう少しでまた来ると思いますけど、ずっと西園寺さんの横で心配そうに顔覗いていましたよ」
「そ、そうなんですか?!」
「はい。妻の様子が心配だから付き添いたいって。でもお忙しいんですかね?何度も病院を出て電話?をしているようでした。でも熱を出した奥さんの心配してくれるなんて素敵な旦那さん。じゃあ、旦那さん呼んできますね」


< 178 / 231 >

この作品をシェア

pagetop