政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
言い返そうにもあまりにもハッキリと私のせいだといった斎藤さんに狼狽えてしまった。

「すみません。ちょっと新しい社員がぶつかってきまして」
「そうでしたか。でも…普通にぶつかってこんなふうに倒れたりしますか?故意では?」

 清川さんの一言に私の頬が強張っていく。
首を左右に振って違いますと言ったが、声が掠れて震えていた。

「故意だったんですね。はぁ、いつも態度が気に入らないと思ってたんです。本当に最悪…」

 ここには味方は誰もいない。

 斎藤さんの大きなため息に怒りと悲しみと悔しさで泣きそうになった。
ギュッと強く拳を作って「私は、押してもないです…」そう言ったが、清川さんは当たり前のように斎藤さんの言い分を信じているようだった。

「とりあえず、この件は…マネージャーに伝えておきます」
「そうしてもらえると助かります」

清川さんが踵を返そうとした瞬間…―

「何してる」

静まり返る周囲に突然声が響いた。

「…あ、」
「何してる」

再度その声は廊下に響く。
「…楓君」
そこに現れたのは楓君だった。早歩きでこちらに向かってくる彼の目は私にしか向いていない。
 私たちのところまで到着すると一度辺りを見渡し眉間に皺を深く刻む。

「この状況は?」
「ええ、たまたま私が通りかかったら、リネンワゴンが倒れておりました。どうやら従業員同士のトラブルがあったようです」

 清川さんの言葉に絶望しながらも、首を横に振った。
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