政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「うそでしょ…」
「嘘ではありません。なので私には知る権利があります。この状況を説明してくれますか」
「あの、だから…っ、西園寺さんがぶつかってきてそれで、ワゴンが…倒れたんです。その音に気が付いて秘書さんが…」
「なるほど。それで日和は?ぶつかったのか」
「違うの、えっと…大きな音がして…後ろを振り返ったら斎藤さんが立っていたの。その時には既にワゴンは倒れていた。だから倒れたリネンワゴンを直そうとしたんだけど…私が故意にぶつかったということになっていて…」
「清川は何故それを故意と判断した?」
「それはただぶつかっただけで倒れるものではないからです。故意にぶつからなければ」
「そもそも故意にぶつかったという証拠はあるのか」
「それは、先ほども言いましたが状況を考えるとそう整理するのが妥当と判断しました」
「珍しく抽象的で、エビデンスのないセリフだな」
「…」
全員の顔が強張っていく。それほどまでに彼の口調は怖かった。
仕事の時の彼をほぼ知らない。
普段はこういう口調なのだろうか。一緒にいるときの楓君はもっと優しい目をするのに。