政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「まぁいい。防犯カメラもあるから確認してもらえば済む話だ。違うか」
「…それは、そうですね」
清川さんの口元が歪む。その様子に清川さんはわざと私を陥れようとしたのではという悪い妄想をしてしまった。
斎藤さんももう口を開こうとはしない。俯き、拳を作って微かに肩が震えていた。
リネンワゴンが倒れた、たったそれだけなのにどうしてこうも拗れてしまったのだろう。すると、斎藤さんが掠れた声を発した。
「ごめんなさい…嘘つきました」
「…っ」
「そうでしょう。防犯カメラというワードにあからさまに動揺していましたからそうだと思っていました。カメラを確認するまでもないでしょう。この件は私からマネージャーに伝えておきます」
「ごめんなさい…」
「謝る相手は違うのでは」
斎藤さんはゆっくりと頭を下げて謝罪してきた。
彼女によると、常に気に入らなかった私に嫌がらせをしたかったようだ。
面と向かって気に入らないといわれると落ち込む。
「清川、お前もじゃないか。そもそも従業員同士のトラブルがあればすぐにマネージャーを呼べばいい。何故干渉した」
「それは…」
「何度も言っておく。私情を挟むような秘書はいらない」
「申し訳ございません。日和さんも根拠もなく決めつけてしまい申し訳ありません」
「いえ…大丈夫です」
その後、楓君はマネージャーを呼びこのようなトラブルがないよう他の社員にも注意するように伝えた。
斎藤さんは終始下を向いていてその後一切視線が合うことはなかった。