政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

「日和、俺と夫婦になってくれませんか。本当の夫婦に」
「もちろんです」

楓君は今までみた笑顔の中で一番素敵なそれを見せてくれた。

「あ、でも…」
「どうした?」
「清川さんは…?昔付き合ってたんだよね?それって今も続いてるんじゃ、」
「清川?」

 楓君の笑顔が消えた。
まるでその名前すら聞きたくないというように顔を歪める。
私は清川さんから言われていたことを伝えた。それからネクタイの件も同様に伝えた。
仮に昔関係があったとしても今私のことを好きと言ってくれたことが嬉しい。それがあればなんだって頑張れる。

「何だよそれ。ネクタイ?清川の家に行ったことなんかない。それにキスしたことももちろんないし、もちろん関係があったこともない。俺は、私情挟むような秘書はいらないと思ってる」
「どういうこと?でも、清川さんは…」
「清川の嘘だろうね。前にパーティーに行ったときに異変に気が付いた。日和は何も言わなかったけど清川がアルコールとノンアルコールを間違えるようなことは絶対にしない。だからおかしいと思って秘書から異動させることにした。ネクタイはもしかしてストライプの?だとしたらそれは会社にいくつかネクタイを置いてあるからそれを持ってきたんだじゃないかと思う。それは帰宅したら見せてほしい、確認するから」

淡々と喋る楓君だが、その声は怒りで震えているようだった。
全部嘘だったことが判明して今まで悩んでいたのは何だったのかと急に馬鹿馬鹿しくなった。
そう思えるのも彼の”好き”が聞けたからなのかもしれない。



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