政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

キスが終わったのだと、そう思ったが

「教えるから、そんなにガチガチになるなよ」
「え…終わってないの?」

 彼のその言葉にまだその先があるのだと知った。とりあえず今日はこの辺で終わらせてもらえないだろうか。懇願するような目線を送り、彼の名前を呼んだ。

「終わってない」
「…終わって、ない?」
「そう、終わってない」

 静かに諭すように言われた私は頷くしか出来なかった。
まるで親と子のようだと思った。彼が私の顔の横に腕を立て至近距離で顔を覗き込む。

「唇少し開けて。日和は力抜いてそのまま俺に任せていればいいから」
「でも息できないよ」
「途中離すし、鼻で呼吸して」
「そうなの?そういうものなの?」
「そういうものだと思うけど。まぁ、慣れると思う」
「でも鼻炎の人は大変だね。キスしにくいんじゃないかな」

 私の発言に楓君は噴き出すように笑った。あまり無邪気に笑うところを見たことがないから、新鮮だった。

「そうかもね」
「そうだよね。うん…あの唇開けていたらいいんだよね。でも息が辛かったら止めてくれる?」
「わかった」
 
 本当は抱き合うだけでもいいし、それだけで十分なのだけれど“夫婦”として一歩を踏み出したいから。彼と距離を縮めるためにも受けれたい。
ギュッと目を閉じて、全身の力を抜いた。楓君の言う通りに唇を開けた途端、彼のそれが私のと重なった。
先ほどと同じように触れるキスは全身がまるで宙に浮いているようにフワフワとした感覚がする。
< 77 / 231 >

この作品をシェア

pagetop