政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
 挨拶はそこまで長くはなくてむしろ”これで終わり?”が素直な感想だった。確かに今日はそんなにかっちりとしたパーティーでもないようだ。乾杯の挨拶をしてグラスに入った飲み物をグイっと口に含む。
だから皆リラックスしているのかもしれないし、私とは違ってこういった場に慣れているのも余裕を作り出している理由の一つだろう。

「行こう」

 楓君の声に頷き、私はあいさつ回りに妻として隣を歩く。

「あぁ、西園寺さん!」
「どうも。お久しぶりですね」
「ええ、前回お会いしたのは…確か去年?」
「そうですね」
「それに、ご結婚されたんですね?隣にいるのは…」
「妻の日和です。結婚してまだ二か月ほどです」
「そうなんですね!素敵な奥様ですね」

気さくな男性が楓君に話しかける。どこの会社の人なのか聞く間もなく、「それでは!」と明るく立ち去る彼に目線を向けたまま「今のは?」と彼に問う。

「航空会社neoの社長だよ」
「え?!社長ってあんなに若いんですか?」
「30代だったと思う。才原さんと言って気さくな人なんだけど、かなりのやり手だよ」
「へぇ」

 それからも絶え間なく続く挨拶に靴擦れを起こしている踵が痛む。
そして、どういうわけか体がフワフワとしてくるのがわかる。体調が悪いのかもしれない。

「日和?」
「ごめんなさい。ちょっとトイレに」

 私はそう言って顔を伏せるとそのまま会場を出てトイレに向かう。体が熱いというかフワフワと浮いた感覚がする。どうしたのだろうか。
トイレで少し体を落ち着かせてから、また会場に戻ると楓君を探す。
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