エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる～お見合い夫婦の片恋蜜月～

私は暗闇でひとり呟いた。
すると、駿太郎さんが身動ぎをする。ゆるゆると目が開き、寝ぼけたような声が聞こえてきた。

「芽衣子、眠れないのか？」
「いいえ、トイレに行ってきただけ」

私は笑顔を作って見せたけれど、困ったような表情になっている自覚はある。
駿太郎さんが手をのばし、くしゃくしゃと私の頭を撫でた。

「ベッド、狭くない？　もっと伸び伸び寝たかったらもう一台ベッドを買ってもいいよ」

それは一緒に寝なくていいということだろうか。私はむっとし、それ以上に悲しい気持ちになって、駿太郎さんの裸の胸に顔を埋めた。

「どうしたの？　芽衣子」
「一緒に寝たら駄目ですか？」
「駄目なんてことはないよ。眠ろう」

駿太郎さんは私の後頭部に手を添え、優しく何度か撫でてくれた。
半覚醒の状態だったらしく、間もなく規則的な寝息が聞こえてきた。私は目を閉じ、眠りが訪れるのをじっと待った。

この温かな胸に顔を埋めていられたら、怖いことなんて何もないはずなのに。