花吹雪~夜蝶恋愛録~
仕事ならば仕方がない。

わざわざ金を払ってまで店にきてもらうことを強制できない。


そうはわかっていても、なぜだかどうしても納得できなかった美咲は、豊原を強引にアフターに誘い、場所を移してふたりで話をすることにした。



豊原が美咲を連れて行ったのは、看板も出ていない、地下にある、カウンターしかない怪しげなバーだった。

客はおらず、豊原がマスターとおぼしき国籍不明の男に金を渡したら、すぐに男はうなづいて出て行き、狭いそこはふたりだけの空間となった。


美咲は、今更になって、少し、たじろいでしまった。



どう見たって普通の人は出入りしなさそうな場所で、当たり前のように普通じゃない行動を取る豊原。

この人は、本当は一体、どんな人なのだろうか、と。


最近では、知らなくてもいいやと思うようにしていたが、やはり、気にはなっていた。


豊原は咥え煙草で腕まくりし、慣れた様子でカウンター内に入ってシェイカーを振り、自分の分と美咲の分のカクテルを作ってくれた。

だからって、バーテンか何かにも見えない。



「豊原さんは、何をしてる人なんですか?」


生唾を飲み込みながら聞いた。

豊原は少しの間を置き、



「人には誇れないことだ」


と、言う。


酒を作り終えた豊原は、美咲の隣をひと席空けてスツールに座った。

そして、咥えている煙草の煙を吐き出しながら、言った。



「三条会系の直参・葛西組。その若頭補佐をやっている」


美咲は目を見開いた。

信じられなかったし、信じたくもなかった。



「ヤクザだったんですか?」
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