何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「どこ…。」
「星羅…?」

すると、民衆の声に紛れ、か細く弱々しい声が、りんの耳に聞こえてきた。
りんが辺りを見回すと、目に飛び込んで来たのは、膝から崩れ落ちていた星羅だった。
りんは、そんな星羅を見つけて、思わず駆け寄った。
彼女の様子は明らかにおかしい。

「星羅!」

りんはそんな星羅の肩を抱いた。

「きょうじは…どこ…。」
「くっそ!!」

立つ気力もない星羅の横で、りんは悔しそうに奥歯を噛みしめた。

「くっ。うっ。」

星羅の目には涙が溜まって、今にもこぼれ落ちそうだ。

「民はだませても…。」

りんが低い声でつぶやいた。

「この者を処刑するー!」

そしてそれと同時に、兵士の声が高らかに広場に響き渡った。



「—————わいらは騙せへん…。」




そして、りんのその声は、大きな歓声にかき消された。

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