何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「はぁ、はぁ、はぁ、」
天音は駆け出していた。
天音も先程の天使教の演説を聞いていた。
そして、すぐにわかった。
あれは、青だと…。
その声を聞いた瞬間、天音は城へと走っていた。
「青!」
そして自然と青を探していた。
『…青は天師教の身代わりだから、城に閉じ込められてるの?』
「待ちなさい。」
パシ
誰かが天音の腕を掴んだ。
「言ったでしょ。青にはもう簡単には会えない。」
「はぁ、はぁ、かずさ…。」
かずさの冷たい手が、天音を捕えて離そうとしない。
「月の印超えるの?」
そして、その厳しい視線も天音を捕らえたまま。
「はぁはぁ…。」
天音の息づかいだけが城の中に響いている。
「…天師教さんは?」
なんとか息を整えて、天音はその名を口にした。
「…演説見てなかったの?」
「だってあれは、青でしょ?」
青は天師教じゃない…。
天音はその事をよく知っている。
それは目の前にいるかずさが、天音にその事実を話していたから。
じゃあ、ホンモノは?
「天師教さんは…生きてるよね…?」
天使教は確かにあの反乱者に襲われた。
でなければ、青があそこに立つはずはない。
天音にも、その事は容易に想像できた。
彼が本当に生きているのなら、なぜそこに彼はいないのか…。
その答えは簡単。
そして天音は、なぜか一度も会った事のない天使教の身を案じていた。