何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「天師教が死んだら、また次の天師教が立つ…。」
かずさが、低い声でつぶやいた。
「え…?」
「変わりはまた探せばいい。」
「変わり…。」
天音は、そのかずさの冷酷な声に恐怖さえ感じた。
「そう…次は青…。」
天使教が殺されるなんて事は、この国ではありえない。
なぜなら、天使教は神。神が人間に殺されるなんて事は、あってはならない。
そうやってこの国は、民衆を簡単に騙していく。
「そんなの…そんなのおかしいよ!!」
天音は思わず叫んだ。
「おかしい?それがこの国のやり方よ。」
尚も、かずさの冷たい視線が天音を真っすぐ見つめる。
「じゃあ、今の天師教さんが死んだら誰が悲しむの?」
「…。」
天音は恐る恐るその言葉を口にした。
そして、かずさは口を固く結んだまま、天音をまだじっと見つめていた。
「人が死んだら悲しむ人がいるんだよ…。」