何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「アイツもつくずくバカやなー!一体なんで今、花火やねん!」

りんがいつの間にか天音の横にいて、空を彩る花火に軽快に突っ込みを入れてみせた。

「天音…。」
「ん?」
「わいなー、天師教嫌いやったんや。」

突然そんな事を言い出したりんの目線は、空にある花火にある。

「…。」
「何もせんで神様のふりしてるだけ。胸くそ悪い奴やって。」

ヒューバーン
花火の音が町中に響き渡る。


「…ほんまに、妃になるつもりか?」

するとりんの目線が、天音へと移った。
そして真剣な眼差しで、天音を見つめた。
そこには、いつものような笑顔はない。

「…わかんない…。それは天師教さんに会ってみないと…。でも、天師教さんは、本当に神様のふりしてるのかな…?」
「…。」

りんは黙って、天音の言葉に耳を傾けた。

「…みんなが気づいてないだけじゃないのかな…。」
「さすがやな…。」

するとそこでりんが、少しだけ口の端を上げて見せた。

「わいの勘は間違ってなかったな。」
「へ?」

そんなりんの言葉の意味を理解できずに、天音はキョトンとした顔でりんを見た。

「天師教を神に仕立て上げてんのは、国や、民や…。」

りんはまた、正面に顔を向けた。

「…なんで、みんなは天師教さんを崇めるの?」

今度はすぐにその言葉の意味を理解した天音は、自然と湧き上がったその疑問を、りんにぶつけてみた。
それは、以前にも感じた事のある違和感。

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