何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「何やってんだよ!!」

その時、誰かが天音の腕を掴んだ。

「………きょう…じ…?」

天音は朦朧(もうろう)とした意識の中で、突然そこに現れた京司の顔を見上げた。

「何してんだよ!!外に出るぞ!」

京司は、そう言って彼女の腕を引っ張り上げ、天音を立たせ、肩を抱いた。
そして、二人で外に向かって歩き始めた。

「もう、無理だよ…。」

しかし、天音の足には全く力が入っていなく、目はうつろで焦点が合っていない。
このままでは、炎に簡単に追いつかれてしまう。

「何言ってんだよ!!お前が教えてくれたんだろう!簡単に諦めんなって!」

それでも京司は、決して諦める事なく、煙の中を進んで行く。

「もうすぐだから!」
「ねえ。京司…私…。」

天音の目は、何かをを見ているようで、見ていない。
それは、京司の目にも明らかだ。

「あの時死んでた方がよかったのかな…?」
「え…?」

しかし、彼の耳に飛び込んできた「死」という言葉に、思わず京司は足を止めた。

「私はここに居るべきじゃないんだよ…。」

ポタ
そして、天音の目からは涙が湧き出し、次から次へと地面へこぼれ落ちた。

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