何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「お前…何言ってんだよ…。」

京司は、足を止めたまま、力なくうつ向くままの天音を見つめた。
彼女の足元には、涙で濡れたシミが増えていくばかり。


―――― どうしてこうなった?



彼女は言っていたじゃないか。
もう一度妃になり、村を作ると。
自分に希望を教えてくれたのは彼女なのに…。

ズキッ

「くっ…。」

その瞬間、あの時刺された傷が痛み、京司は顔を大きく歪めた。
まだ京司のその傷は、完全には治りきっていなかった。

「…京司?」

さすがの天音も、その苦しそうな彼の声を耳にし、思わず彼の方を見た。

「何でもねーよ。行くぞ!」
「え…。」

そう言って、京司は天音の肩を抱いたまま、また歩きだした。

「何らしくない事言ってんだよ!言っただろ…。」
「天音!」

その時、天音を呼ぶ声が聞こえ、京司はその方へと視線を送る。
その声の主は辰。城の中を探しに来た辰が、天音達を運よく見つけ出したのだ。

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