何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「大丈夫か!」
辰が二人に駆け寄った。
「ちょうどよかった。」
京司はそう言って、天音の体を辰に預けた。
そして、自分は力が抜けたように、その場にしゃがみこんだ。
「おい!大丈夫か?」
そんな京司の額には汗が光っている。
「大丈夫。俺は一人で行ける。天音をたのむ。」
「…本当に大丈夫なのか?まだ傷が…。」
「大丈夫だって。ホラ。それより天音だろ。」
「…わかった。すぐに応援を呼ぶ。」
辰は、京司の苦しそうな様子が気になったが、今はそれよりも、天音を外に連れ出す事が優先だと考えた。
なぜなら天音は、いつの間にか気を失っていた。もう自力では、外に行く事ができない。
辰はそんな天音をおぶって、出口へと走った。
「ハハ。俺…けっこう、無様だな…。」
ひとり残された京司は小さく笑い、そしてまた歩を進めた。