何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「そうだよ。私を助けてくれたのは…きょうじは?」

天音は、やっと意識がはっきりしてきたのか、いつも通りの口調に戻り、ハッキリとその名を口にした。

「え…?」

今度は星羅が思わず声を漏らし、辰もまた顔を強張らせる。
そう天音が口にしたその名前は、この場にはいない彼の名前。
どうして、ここで彼の名が出てきたのか、星羅には見当もつかない。

「ねぇ、京司はどこ?」

天音は周りに構う事なく、彼の名を呼び、キョロキョロしながら、周囲を見渡した。
しかし、どこにも彼の姿は見えず、天音は困惑の表情を浮かべ、取り乱し始めた。
その異様な光景に、そこに居る誰もが息を飲んだ。



「京司―――!!どこーー!」



天音はしまいには、大声で彼の名を叫びだし、その叫びは広場中にこだました。



―――― しかし、その声はもう、彼には届かない。



「…天音…。」



辰は天音のその姿に落胆せざるをえなかった。



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