何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
数日後
「町、いえ国が混乱し始めています。各地で小さな反乱が、いくつも起きております。」
官吏が現状を報告し始めた。
国の混乱が見え始め、国の重鎮達は、対策を話し合うために集まっていた。
「天師教様には、何の力もないのではないかと…。」
「当たってるな。」
それを聞いた京司は、まるで他人事のようにそう言い捨てた。
「この国を潰すおつもりか?」
すると、やはりここで宰相が低い声で一喝した。
「あなたの父上と、その祖先が守ってきたこの国を。」
宰相が投げやりな京司を、じっと見つめる。
その視線は、そんな事は許されないと訴えかけていた。
「…。」
京司は、その目線から目をそらす事しか出来ない。
「石をお探し下さい。」
「え…。」
すると、宰相はここぞとばかりに口を開いた。
ここでその言葉を聞くとは、思ってもみなかった京司は、思わず声を漏らした。
「昔この国には一つの石がありました。この国を守る力が宿った石でございます。」
宰相は初めて奇跡の石の事を、京司の前で口にしたのだ。
やはり彼らは石の存在を知っていた。
そして、その石を欲している事は、ヒシヒシと京司に伝わってくる。
「やっと本音が出たな。」
そして、京司が顔を伏せたまま、ポツリとつぶやいた。
やはり、彼らが手に入れたいのは石。
彼らにとって京司は、石を手に入れるための道具でしかないのは、京司にはお見通しだった。