何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「妃候補と天師教を会わせるだと?」
明らかに不快な表情をした宰相が、ギロリと士導長を睨んだ。
「ハイ。」
士導長はその視線から逃れるように、目を伏せて返事をした。
宰相に呼び出されていた士導長は、そろそろ妃を決めるようにと催促されていた。
そこで、最終的な決定方法を士導長は提案した。
しかし、士導長の提案した、天使教と妃候補を会わせて天使教に選ばせる。というその方法は、宰相の怒りを買う結果となった。
「何を馬鹿な事を!」
宰相はくだらないと言わんばかりに、声を張り上げた。
もちろんその提案は、宰相の考えとは相反するもの。
「私にできるのは、最終的な候補を上げるだけでございます。最後にお決めになるのは天師教様でございます。」
士導長は顔を上げ、宰相の目をしっかりと捉えた。
「会わせる必要はない!」
しかし、宰相は全く聞く耳を持とうとはしない。
「お願い致します。宰相殿。妃は…」
「妃など誰でもよい。」
宰相はただ冷たくそう言い放つばかりで、全く士導長の話に耳を傾けようとはしない。
(なぜわからぬ…。)
「しかし天師教様は、それでは納得しないでしょう。」
しかし、そこで士導長は簡単に頷く事はなく、さらに声を低くして宰相を凝視する。
まるで、宰相を挑発するかのように。
「なんだと?」
宰相は士導長の方を向き、眉をひそめた。
「あなた方の欲している物は、それでは手に入りませんぞ。」
そして、士導長は鋭い視線を宰相に向けた。