何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「…。」
「今は何もないけど、昔はあったんだよ…。私の家はあの丘の向こう!」
そう言って天音は、京司に向かって笑みを見せた。
「じいちゃんの畑でたくさん野菜育ててたんだよ!あっちには牛飼いのヤンおばさんが住んでて、あっちは村長さんの家があった!」
「天音…。」
「なのに、どうして…。」
(今はもう何もない。)
ヒュー
そう、今はただ、風が虚しく吹いているだけ。
「…。」
「もしかしたら全部夢だったのかもって思った。」
天音は下を向きながら、震える唇を動かした。
「うん。」
そして、京司は天音の言葉に、静かに相槌を打つ。
「今日ここに来たら村は元通りで、じいちゃんがおかえりって言ってくれって…。」
「うん。」
「どうして、みんな居なくなっちゃったの…。」
「それから?」
「私がこの村を出たのがいけなかったの?私は妃になりたかったわけじゃない!!ただおじいちゃんと、村のみんなに喜んでもらえる方法だと思ったの!!」
「ああ。」
「全部夢だと思いたかった…。でも…どっちが夢で…何が現実か分からなくなって…。」
「…。」
京司は黙って、自分の前に立つ天音の背中を見つめた。
「教えてよ!じいちゃん!!」
ヒュー
しかし、誰も何も答えない。
風の声だけが虚しく聞こえるだけ。
「今は何もないけど、昔はあったんだよ…。私の家はあの丘の向こう!」
そう言って天音は、京司に向かって笑みを見せた。
「じいちゃんの畑でたくさん野菜育ててたんだよ!あっちには牛飼いのヤンおばさんが住んでて、あっちは村長さんの家があった!」
「天音…。」
「なのに、どうして…。」
(今はもう何もない。)
ヒュー
そう、今はただ、風が虚しく吹いているだけ。
「…。」
「もしかしたら全部夢だったのかもって思った。」
天音は下を向きながら、震える唇を動かした。
「うん。」
そして、京司は天音の言葉に、静かに相槌を打つ。
「今日ここに来たら村は元通りで、じいちゃんがおかえりって言ってくれって…。」
「うん。」
「どうして、みんな居なくなっちゃったの…。」
「それから?」
「私がこの村を出たのがいけなかったの?私は妃になりたかったわけじゃない!!ただおじいちゃんと、村のみんなに喜んでもらえる方法だと思ったの!!」
「ああ。」
「全部夢だと思いたかった…。でも…どっちが夢で…何が現実か分からなくなって…。」
「…。」
京司は黙って、自分の前に立つ天音の背中を見つめた。
「教えてよ!じいちゃん!!」
ヒュー
しかし、誰も何も答えない。
風の声だけが虚しく聞こえるだけ。