何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「天音…?」

京司は、その様子をただ見守る事しかできない。
一体何が彼女を動かしているのか…。
その教会の中は、そんなには大きくない。
天音は身廊を、一歩一歩祭壇に向かい進んで行く。

ガク
すると、天音が突然膝から崩れ、床に座り込んだ。
そして、自然と涙が彼女の頬をつたう。

「おかあ…さ…ん…。」

天音の目の前には、十字架。そして…。


「ちがうで。」
「え…。」


まだ扉の前に立つ京司が、その声の方へと振り返った。


「これはキリストの母マリア様や。」


泣き崩れた天音を、マリア像が優しく見下ろしていた。

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