何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「いやー。やっぱわいは、動いてる方が性に合ってるんやなー！」

りんは馬に乗っているにも関わらず、別の馬に乗っている二人に、大声で話かけてくる。
これからの移動にちょうど良いとりんに言われ、京司は中月町で馬を調達していた。

「だから、わかったって。」

京司が呆れながらも、とりあえずりんの話に合わせていた。
しかし、何だかんだで、ずっとりんの話に付き合わされている京司は、とうとう相槌を打つのも面倒になってきていた。
一方の天音は、どこかまだ虚ろな表情で、馬の手綱を握る京司の背中にしがみついているだけ。
りんの話など、全く耳に入ってはいなかった。

「いやー、この二人が揃ったなんて知ったらシド喜ぶわ！」
「シド？」

京司は、その聞き覚えのない名前に、思わず眉をひそめた。

「お前が土下座したリーダーや。」
「ああ…。」

京司はどこか複雑な表情で、頷いてみせた。