何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「まあ、なんにせよ、石は絶対に国に渡したらあかん。」
「…。」

国は石を欲している…。それは星羅も何となく予感はしていた。
国の者達は、石の力を使って民衆を制圧するに違いない。
それは目に見えている。

「ていう事やから、ここはわいらが力を合わせて!」

りんは、その場の張りつめた空気を壊すかのように、わざとおどけて言ってみせた。

「私は別に石に興味はないわ。」

しかし、星羅はどこか冷めた瞳でりんを見た。

「なんや、こっちもかいなー。月斗も全然手伝ってくれへんしー。」

りんは、残念そうに肩を落とした。

「月斗?」

星羅がその名を聞いて、怪訝な顔をりんに向けるのも無理はない。
星羅は月斗が城に捕えられた事は知っていたが、その先の事は全く知らなかった。というか、全く興味はなかった。
しかし、彼も使教徒の一人。石の事に関わっているとなれば、話は別。

「あー、アイツな城を脱走したんや。で、まあ、色々あってな…。」

りんはバツの悪そうな表情を浮かべ、言葉を濁した。
しかし、りんが同じ使教徒である月斗と関わっているのは、星羅には容易に想像できた。

「…まったく。あんなお尋ね者と…」

そして、星羅は、さらに冷ややかな視線をりんに浴びせた。

「で?星羅はなんで妃になるんや?京司と知り合いなんやろ?まさかあいつの事…。」

りんがニヤニヤしながら、そんな事を聞いてきた。

「誤解しないで、私達はそんなんじゃない…。」

星羅はそんなりんの言葉を、あっと言う間に否定した。

(私と京司は…。)

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