何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「そうか―?わいはアイツ好きや!」
「え…?」
りんが突拍子もなく、また訳がわからない事を言い出した。
りんは、星羅にお構いないし、話題をどんどん変えてしまう。
そんな突然の方向転換に、星羅が簡単に着いていける訳もなく、訝しげにりんの顔を見た。
「あいつ面白い奴やしな!」
りんは、やっぱり京司に相当懐いているらしい…。
その事だけは、星羅にもすぐにわかった。
しかし…
「天音も、京司の事知ってるんでしょ…。」
気が付けば、ずっと誰かに聞きたかった、あの二人の事を口にしていた。
その事だけは、ずっと星羅の心に引っかかったままだった。
「…ああ。」
いつのまにか、りんは遠くを見つめていた。
「…。」
―――もうその運命は、止められない。
「でも、天音は、京司が天師教だっちゅう事は知らん…。」
「…。」
それは想定してた中での、最悪の結末。
今日も吹き荒れる、この国には似つかわしくない冷たい風が、星羅の長い髪を揺らした。