何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「何や?」

りんは今日も城の前の階段に座って、町を眺めていた。

「てん…、京司から。」

わざわざ京司と言い直したかずさの意図は、何なんだろう…。
りんはぼんやりとそんな事を思い、その紙を受け取った。

“何か用があるなら、この紙に書け”

その紙には、殴り書きでたった一言そう書かれていた。
りんはその紙に、京司に伝えたい事をスラスラと書いた。

「悪いなかずさ。この紙京司に渡してもらえるか?」
「ハイハイ。」

かずさは少しめんどくさそうに、その紙を受け取る。
こんな面倒な事、普段なら引き受けないであろうかずさが、素直に従っている。それには、何か訳があるのだろうかと、りんは深読みせずにはいられなかった。

「かずさ。しつこいようやけど、なんで城におるんや?」
「わからない?」

りんはやっぱり、聞かずにはいられなかった。
彼女の持つ使教徒の力のせいで城にいるのであれば、それは…。

「城イコール国」

かずさはたった一言そう言って、りんに背をむけて階段を上り始めた。
やはり彼女の帰る場所は、いつだって城。

「…。」


———それはかずさにとって、辛い事なんやないか?


しかしそれを口にする事は、りんにはできなかった。


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